設立の背景

1. 研修と認定の必要性

 進歩が激しい医学・薬学分野では「昨日卒業して、今日学ぶのを止めれば、明日は無学者になる(テネシー大学)」といわれる。医療の場において薬剤師が期待される職務を果たすためには、免許取得直後から生涯にわたる継続研修が必須である。そして、生涯研修を自己責任の下で行って、必要な能力・適性を備えていることの客観的証明として、各種認定などの資格証書(Credentials)を受ける必要がある。

2. 薬剤師に対する認定制度の進展

  • 日本薬剤師研修センター及び日本病院薬剤師会による研修認定薬剤師制度が平成6年より発足した。
  • 学会認定薬剤師の制度が平成9年に臨床薬理学会で、平成12年に日本医療薬学会で開始された。
  • 平成12年ごろより、がん薬物療法、感染制御、栄養管理その他の分野で、専門薬剤師の必要性が高まり、その養成のための研修が各地で始められたが、それらの水準維持と相互調整の必要性が認識され始めた。
  • 平成15年以降薬学教育改革が本格化し、国家試験受験資格として特に重視される実務実習の指導者認定の必要性が示された。また、旧来の教育を受けた薬剤師の信頼性確保の方策として、生涯研修と認定取得が勧められた。
  • アメリカでは既に以前より各種認定制度が実施されてきたが、それらの質と機能を調整するための公認機関として、生涯研修認定母体(プロバイダー)に関しては1975年以来ACPE (Accreditation Council for Pharmacy Education)が定期的な評価・承認を行っている。また乱立気味の専門薬剤師認定制度の調整のために1999年にCCP (Council on Credentialing in Pharmacy)が設立された。

3. 他の医療職における状況

  • 医師も看護師も専門化制度に力を入れている
  • 医師は、殆どの個別専門領域学会で専門医制度を設定し実施中
  • 看護師は看護協会が厳密な条件を有する制度を設定し実施
  • 医師の各専門医制度を調整するために、日本専門医認定制機構(平成15年1月法人化)が発足している

4. 公的組織等からの要望

  1. 文部科学省「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」報告
    • 学習が継続的に実施されることを保証する方策が検討される必要がある。
    • 薬剤師が常に知識・技術の研鑽に努めることを制度的に保証する仕組みが所管官庁や学術・職業団体においても設けられることが期待される。
  2. 厚生労働省「薬剤師問題検討会」報告
    • 生涯研修事業をさらに活発化させるとともに、それらの相互調整を図り、水準を保つための機関を設置することが望まれる。
    • 生涯研修の重要性に鑑み、制度として位置づけることも検討するべきである。
  3. 衆参両院「学校教育法の一部改正案」への付帯決議
    • 現に薬剤師の資格を有している者が、生涯にわたり学習する機会を充実するよう配慮すること。
  4. 衆参両院「薬剤師法の一部改正案」への付帯決議
    • 新制度移行前の薬学教育を履修して薬剤師となった者についても、近年の医療技術の高度化、医薬品の適正使用の推進等の社会的要請にこたえるため、卒後教育の一環として実務研修の充実・改善を図ること。