印刷はこちらから(PDF)
薬剤学巻頭言2004.7
薬剤師の学術的よりどころに 
内山 充 Mitsuru Uchiyama
財団法人 日本薬剤師研修センター
 私は薬剤学を、すぐれた有効成分とそれを必要とする患者とを結ぶあらゆる科学技術の粋であると考えている。有効成分を実際に医療に使えるように、どう製剤化しどう使えばいつまで望ましい部位で有効な働きを示すか、患者に最も適切適正な使い方はどうすれば分かるかなど、創薬から適正使用、すなわち医療の基本をなす薬物療法の、材料と方法から結果にいたるすべての問いかけに直接知識を供給できる学問だからである。
 私の専攻した衛生化学は、食品や生活環境にある有用成分や危険因子を通じてヒトの健康を考える役割を有するが、薬剤学はモノとしての医薬品の品質、有効性、安全性を左右するあらゆる因子の最適化を目指して、ヒトに対する薬物療法の広い範囲に責任を持っている。すなわち、衛生化学と薬剤学は、ともに薬学独自の学問分野であり、かつ長い間薬学を医療・保健につなぐ役割を負ってきたといえる。。
 最近の薬学教育の改革機運により、臨床に強く、チーム医療に貢献できる薬剤師の養成が薬学教育の主な目標となりつつあるが、従来からの薬学の教育研究の中で、薬剤学こそがこの要望に応えられる基盤を有していることは言うまでもない。薬剤学の基礎研究や教育課題の中には、他の医療職に欠けていてしかも実務医療の充実に必要とされる薬学独自の知識技術が数多くあるからである。それらを、今後6年に延長される教育年限の中で十分に習得させることが、求められている薬剤師教育を果たす重要な鍵ともなる。。
 薬剤学の基礎知識を幅広く理解し身につけている薬剤師であれば、医薬品の管理や調製にも、薬物の処方監査や投薬設計にも、あるいは薬物に関わる事故の未然防止に関しても、物性、安定性、相互作用、薬物動態、TDMデータ等を駆使した説得力ある発言ができて、医療に大きく貢献できるに違いない。。
 一方、薬剤学の基礎研究のレベルも、医療実務からのフィードバックによって著しく向上する。新医薬品製剤の開発からその有効適正な使用までの理論的・実験的根拠を基に、医療に貢献することが薬剤学の最終目的であるからには、研究のシーズは医療実務の中に豊富にあり、医療を支える研究こそが、臨床現場のみならず企業の求める薬学研究でもある。したがって、教育内容の医療へのシフトや、6年一貫の教育で研究の活力が衰えるなどという守旧的な発想はもつべきでない。医療に明るい基礎研究者によってのみ創造的な医薬品や製剤の開発が可能であることは、歴史が証明している。。
 日本薬剤学会には、ぜひとも医療に携わる実務薬剤師の学術的よりどころになって欲しい。そして学会メンバーの専門的知識・経験・能力を生かして、たとえばTDM専門薬剤師、テーラーメイド薬物療法専門薬剤師、品質管理専門薬剤師などのCredential (証書)を学会の名で与えられるような認定制度を計画してもらえないものかと考えている。
>>HOME