既存の薬剤師認定制度およびその実施母体の紹介 (平成16年9月現在)
内山 充
 生涯学習によって取得する認定の目標として、大きく二つに分けることができる。
ひとつは生涯研修認定であり、薬剤師業務の全般にわたって薬剤師という専門職の能力・適性を向上させるための学習を言い、薬剤師免許の更新に相当する。
もうひとつは専門薬剤師認定であり、特定の対象や疾病の領域で他の医療職とチームを組んで患者の安全確保に貢献するための学習を言い、専門医制度に類似している。
 薬剤師認定制度認証機構は、薬剤師の生涯学習の発展と質的向上のために、上記の生涯研修認定制度や専門薬剤師認定制度を評価・認証して公表することを事業目的としているが、今日まで認証を受けるにいたっている認定制度はまだひとつもない。現在は認証体制の準備段階にあるといえる。

 そこで、現段階でわが国で行われている薬剤師の認定制度を、目的と内容にしたがって分類して紹介することとする

1 生涯研修認定制度
1.1 研修認定薬剤師制度:
 全薬剤師が参加できる、免許の更新と同じ意義と目的を持つ研修である。自己責任のもとで計画し、自由に課題を選んで実行した生涯研修の成果(単位)を自己評価し、取得した単位数に基づき認定証を受けるのがこの制度である。
 日本薬剤師研修センター(研修センター)研修認定薬剤師制度がこれに当たる。認定証を取得するにはまず薬剤師研修手帳を購入し、研修の記録(単位シール)が一定数に達した後に申請すればよい。
 認定の対象となる単位は、研修センターにあらかじめ生涯研修の実施機関として登録された2300以上の学会、大学、団体、グループ等によって全国的に多数行われている。会場で座学で受ける研修ばかりでなく、テレビ(CS-TV)、ビデオ、インターネットによる研修も提供されている。研修会のプログラムは、研修センターニュース、ホームページあるいは多くの雑誌(日本薬剤師会雑誌、日本病院薬剤師会雑誌、調剤と情報、ファーマビジョン等)に紹介されている。薬剤師がそれらに参加できる機会はかなり豊富であるといってよい。
1.2 日本病院薬剤師会認定薬剤師制度
 日本病院薬剤師会の会員が対象である。会員が自ら計画して研修を重ね単位を取得して申告することで学習の証明を得、5年連続で証明を取得したものに認定証が与えられる。
 会員は、自己申告制に基づき年間40単位以上取得した場合、研修認定の申請ができる。申請は単年度(4月1日〜翌3月31日)単位とし、認定は各都道府県病院薬剤師会で行われ、それを日本病院薬剤師会が承認し単位年度認定証が交付される。5年間継続して認定証の交付を受けた会員に対して生涯研修履修認定証が交付される。
 認定の対象となる単位は、各職域団体が主催する講習会、研修会、学会あるいは医学・薬学関連の学術集会への参加、グループ研修、実習研修、自己研修、学術誌投稿により取得できる。認定証の有効期限は単位年度認定証が1年間、生涯研修認定証は5年間とされている。
1.3 日本医療薬学会認定薬剤師制度
 所属会員からの要望に応え、平成10年11月より発足したもので認定薬剤師と、指導薬剤師および研修施設の認定あるいは委嘱を行っている。
 認定薬剤師として認定を受けるには、日本医療薬学会の会員であり、規定された資格を有し、本学会が定める試験に合格しなければならない。指導薬剤師とは、認定薬剤師の認定資格を得るために指導に当たる薬剤師として、認定薬剤師の中からさらに高度の資格を備えていることを本学会が審査の上委嘱するものである。

2.特定研修制度:
ある程度まとまった回数あるいは期間で、一定のプログラムにしたがい行われる研修であり、原則として試問あるいは試験を行ない認定証が与えられる。特定領域の知識・技能を深めるための目的で行われる。後に述べる専門薬剤師制度と類似の点もあるが、専門薬剤師の認定を受けるための資格として有効の取り扱いを受けるものもある。
 日本薬剤師研修センターと、日本生薬学会との共同で実施されている。
漢方薬・生薬に関する専門的知識を習得し、能力と適性を備えた薬剤師であることを認定する制度である。漢方薬・生薬専門分野においてレベル以上の能力と適性を持っていることを試問等により確認し、その能力が証明された薬剤師に認定される。
1)取得対象者:すべての薬剤師
2)取得要件:漢方薬・生薬に関する専門的知識を習得し、能力と適正を備えた薬剤師であること。
3)認定基準:日本薬剤師研修センターと日本生薬学会実施の漢方薬・生薬研修会(座学・ビデオ・CS-TV)および薬用植物園実習(レポート提出必須)に参加し、試問に合格していること。
4)受験資格:認定取得要件を満たしている者
5)認定更新:3年毎

3.専門薬剤師制度
 特定の対象や疾病に関連する薬学実務領域で、経験と学習を積み、当該領域でのチーム医療に薬剤師として貢献できる能力と適性を持っていることを、試験により確かめて認証するものである。しかし、わが国ではまだ専門薬剤師の認定制度が確立されているとはいえない状況にある。
 学術団体としての日本医療薬学会、日本薬学会、および職能団体としての日本病院薬剤師会によって、計画段階にあるものがいくつかあるが、いずれも平成16年10月現在、認定制度として要綱、応募資格、手順等が公表されてはいない。
 これらは、現準備段階では、学会や団体への加入歴、特定領域での実務経験、特定研修の受講等が応募資格として求められるものが多いように見えるが、最終的には、十分な学習と経験をつんだ薬剤師であれば誰でも応募できるような形のものが望ましいと考えられる。
これらの専門薬剤師制度の体制が整い、制度として薬剤師に広く提供されるまでには、今後試行段階と認証段階を経なければならない。
 現在専門薬剤師制度として計画されているもの、計画を行っている地域、団体の例として、ホームページ等で状況の把握できるものを挙げる。

●日本病院薬剤師会の専門薬剤師認定制度
 専門薬剤師認定制度特別委員会を設置(平成16年)し、がん薬物療法小委員会、感染制御小委員会、栄養療法小委員会を設置し、日本医療薬学会との連携のもとに専門薬剤師認定制度のあり方を検討中である。がん薬物療法専門薬剤師制度に関しては全国各地で行われている自主的な教育・研修の実績等を統合して、制度の確立に向けて最終調整の段階に入っている。平成16年5月には、近畿ブロックにおいて、がん薬物療法専門薬剤師認定試験を実施した。

●都道府県病薬においては、各地で専門薬剤師養成にむけた研修会が開催されている。ここに紹介するのはその動きの一例である。詳細については各地域の病院薬剤師会に照会してほしい。
兵庫県病院薬剤師会では、がん薬物療法、精神神経疾患治療、糖尿病治療、栄養療法の各分野の薬剤業務における専門的な知識および技能を取得するための継続的なトレーニングのために研修プログラムを作成し、兵庫県病院薬剤師会メール情報配信サービスを通じて会員に提供している。
東京都病院薬剤師会ではがん、褥瘡、糖尿病、栄養輸液、緩和ケア、感染症、精神科領域の研修会
愛知県病院薬剤師会では、褥瘡、高齢者、糖尿病、がん領域の研修会
熊本県病院薬剤師会では栄養療法、感染制御、がん、糖尿病、精神科領域の研修会
長野県病院薬剤師会では専門薬剤師養成講座(TDM専門薬剤師、感染制御専門薬剤師)を開催
●日本医療薬学会の専門薬剤師育成活動
 平成13年以来、専門薬剤師育成委員会を設置し、日本病院薬剤師会の活動と並行して、糖尿病療養指導士、がん薬物療法専門薬剤師、感染制御専門薬剤師の育成に協力している。
●日本薬学会医療薬科学部会
 部会活動として、高齢者医療専門薬剤師の育成を計画している。

4.他学会・団体関連の専門薬剤師等の認定制度
 薬剤師独自の学会・団体以外にも、すでにいくつかの学会や団体が、薬剤師を含めた医療職に対して行っている認定制度に薬剤師も参加し、専門薬剤師の認定を受けることができる例がある。現段階で見られるいくつかの制度を紹介する。

4.1 CRC認定制度
 日本臨床薬理学会によって行われている認定である。医薬品の臨床試験の実施に際してCRC(治験コーディネータ)として専門家と呼ばれるにふさわしい実力を持つ者を日本薬理学会認定CRCとして認定する制度である。。
1)取得対象者:薬剤師、看護師、臨床検査技師等の有資格者 
2)取得要件:専門CRCとして一定以上(またはそれと同等)の実務経験を有すること。学会指定のCRC研修会と会議等に参加していること
3)認定基準:活動実績(一定数の担当プロトコール・症例・経験実務項目)、参加実績(学会指定のCRC研修)、推薦状(所属長または治験チームの責任医師)、試験合格
4)受験資格:一定の実務経験、一定の活動実績、学会指定の研修会等への参加実績、推薦状(所属長または参加した治験チームの治験責任医師)、試験形式は筆記試験(多岐選択形式と論文)、面接試験
5)試験の予定:平成16年11月20,21日、ただし申し込みは終了
6)認定更新:5年毎
4.2 栄養サポートチ−ム(NST)専門療法士認定制度
 日本静脈経腸栄養学会が実施している栄養サポート専門栄養療法士(NST専門療法士)認定制度である。
1)取得対象者:薬剤師、管理栄養士の有資格者。以下は薬剤師の要件を示す
2)取得要件:薬剤師免許を有し、薬剤師として一定期間、医療施設・福祉施設あるいは保険薬局に勤務した経験を有し、かつ、一定期間本学会会員であること
3)認定基準:活動実績(一定数の担当プロトコール・症例)と参加実績(本学会学術集会、本学会教育セミナーに一定回数参加)、認定教育施設で一定時間以上実地修練を修了していること。試験合格
4)受験資格:薬剤師免許取得者、日本静脈栄養学会学術集会参加証、教育セミナー受講証、実地修練修了証明書
5)試験の予定:平成16年11月3日、ただし申し込みは終了
6)認定更新:10年毎
4.3 糖尿病療養指導士
 日本糖尿病療養指導士認定機構が実施している。糖尿病とその療養指導全般に関する正しい知識を有し、医師の指導の下で患者に熟練した療養指導を行うことのできる医療従事者を糖尿病療養指導士に認定する制度である。。
1)取得対象者:薬剤師、看護師、管理栄養士、臨床検査技師、理学療法士の有資格者
2)取得要件:認定機構で定める施設で一定期間継続して療養指導業務に従事していること
3)認定基準:本機構主催の講習会に一定回数以上出席していること。糖尿病患者の療養指導の業務に従事していること。一定の自験例を有していること。試験合格
4)受験資格:糖尿病療養指導業務従事の医療施設長の証明書、一定の自験例、受講 修了証
5)試験の予定:平成17年3月6日、ただし申し込みは10月末まで
6)認定更新:5年毎
4.4 認定栄養情報担当者(NR) 
 独立行政法人国立健康・栄養研究所が、健康・栄養食品について、正確な情報・知識を有していることを試験して認定するもの
1)取得対象者:薬剤師、管理栄養士、栄養士、看護師、保健師、助産師、臨床検査技師、医師・歯科医師の有資格者
2)取得要件:本研究所指定のNR養成講座で一定の単位を取得した者
3)認定基準:研究所指定養成講座で一定の単位を取得した者、試験合格者
4)受験資格:NR指定養成講座受講者。
5)試験の予定:平成17年6月予定
6)認定更新:3年毎
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