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月刊薬事2004.8

薬剤師認定制度認証機構の目指すもの

薬剤師認定制度認証機構 理事長 内山 充

はじめに

有限責任中間法人「薬剤師認定制度認証機構(Council on Pharmacists Credentials)」(以下認証機構)が、去る517日に(社)日本薬剤師会、(社)日本病院薬剤師会,(社)日本薬学会、日本医療薬学会、(社)日本私立薬科大学協会、国公立薬学部長会議、(財)日本薬剤師研修センターの7団体を初期社員として設立された。総会において表1の役員を選び、続いて設立理事会を行い理事長を互選した。

この認証機構は「免許取得後の薬剤師に対する各種の認定制度を認証(Accredit)する」ための機関である。本稿では、認証機構の設立目的と設立にいたる経緯、ならびに活動の方向性について述べるが、事業内容を一言でいえば、薬剤師法と学校教育法の改正という薬剤師に関する大改革・新時代に直面して、薬剤師が世の中に見える形で生まれ変わるために行う自己研鑽の成果を、薬剤師自身の手で客観的に認証し、薬剤師の職能に対する社会的信頼を高めようとするものである。

したがって当面、多くの機会になるべく多くの人々に本稿と同様の内容をお知らせして設立の意図を理解して頂きたいと考えている。

1.性 格

 この認証機構は、

@「安心、安全な医療の担い手にふさわしい質の高い薬剤師を養成する」というこの度の法改正の目的を、真に意味ある姿として達成するためにますます充実拡大が必要とされる免許取得後の薬剤師の生涯研修に対する認定制度、ならびに、

A薬剤師が医療の場で、他の医療職とチームを組んで患者の安全確保のために有意義な貢献をする上でどうしても必要となってくる特定領域の専門的職能を持つ専門薬剤師の認定制度、

この二種類の制度に代表されるような、薬剤師の免許取得後における学習の成果に対する各種の認定制度を適正に運用発展させ、必要な水準を保ち、それぞれの制度で与えられるCredentials (資格証書)の信頼性を確保することを目的とする自主的な中立の機関である。

2.経 緯

わが国では現在までに、薬剤師の自己研鑽の成果に対して幾つかの認定、証明、あるいは称号の給付がなされ、また最近では各地で専門薬剤師の養成と認定の計画がなされている。これら認定制度は薬剤師が、現時点で必要な知識を学んで日常の業務に生かす意欲を示すためにも、あるいは専門実務領域において優れた能力・適性を習得してそれを医療の場において発揮する上でも、分かりやすくかつ必要な制度であるといえる。

しかしながら、薬剤師に関する個々の認定制度を自然発生に任せておくことにより将来制度上の混乱を生じる恐れもあると考えられる。また、団体や学会が同じような認定制度を各個に計画するのは、競争原理からすれば望ましい面もあるが、薬剤師全体の生涯学習の効率を上げる目的から見ると必ずしも好ましいことではない。

このような考えから、予め薬剤師に関連する代表的各団体の同意の下に、認定制度について一定の評価基準等を設定し、国内外の優れた制度の紹介等の情報を提供するなどして、各種認定制度の育成と調整を行い、薬剤師に与えられるCredentialsの質を保つことが、薬剤師に対する認識と信頼をさらに高めることになると言う考えに至った。

またこのような試みは、行政の指導等によって規則として運用するよりも、自発的な相互評価による認証(Accreditation)を行い質的向上を図るほうが、薬剤師の意欲を公に表明することにもなると確信された。そこで、冒頭に挙げた各団体に呼びかけ、平成15年6月以来4回の準備会を開催してこの度の設立を見ることが出来た。

3.組織と運営

認証機構の基本的な運営方針は理事会で決定される。理事は必ずしも社員団体に所属する者には限定しない方針であるが、薬剤師関連の学術、職域、教育・研修を代表する方々にご就任いただけたと考えている。なお、表1の理事の任期は本年度末までである。

生涯研修認定制度および専門薬剤師認定制度の実施母体とその事業内容の評価は、理事長が委嘱する薬剤師認定制度委員によって行われ、理事会が認証を決める。認証機構の信頼性は公正適切な評価が行われることに懸かっているので、この委員会の責任は重い。学識経験者、薬剤師実務関係者、薬剤師教育・研修関係者の中から、実質的に評価に時間を割いていただける方で、見識と実績を有し適正な評価をお願いできる方々を委嘱する予定である。全国的視野でお願いしたいことから、評価は会議の席で意見交換というより主として通信技術を活用した方法によらざるを得ないと考えている。そのために、取りまとめ役として経験豊かなコーディネーターを事務局スタッフとして委嘱することとした。

基準や指針の作成に関して、あるいは国内外の有用な情報の解析提供に当たって、専門の観点からご支援いただくために、上記認定制度委員とは別に、定員や任期にかかわらず随時専門委員を委嘱することとしたい。

認証機構の活動は現在緒についたばかりではあるが、その意図するところは薬剤師の将来像に深く関与し薬剤師全体の連携を必要とするものである。したがって運営状況についてはホームページ(http://cpc-j.org)その他の広報手段を通じて常に広く知っていただくように努力したいと考えている。

4.認証対象 

従来の4年制教育を受けた薬剤師のレベルアップを当面の目的として,さらに、新しい教育制度で教育を受けた薬剤師が日々進歩する医療の担い手としての責務を果たすためにも、生涯研修は義務化の趨勢にある。そのためには、生涯研修の履修を証明するための「単位給付と認定」を行う体制を大規模に充実整備する必要がある。そして、現在の日本病院薬剤師会や日本薬剤師研修センターのほかに、生涯研修を責任持って実施し単位を認定する実施機関(プロバイダー)を全国的に育成する必要が生じる。アメリカでは、薬剤師免許の更新に必要な単位取得のために、400近いプロバイダーがACPE(薬剤師教育認証協議会)により認証され公表されている。このような生涯研修プロバイダーの認証は本認証機構の重要な事業の一つとなろう。

一方、最近各方面で話題となっている専門薬剤師制度については、患者の安全確保に薬剤師の職能をより一層生かすために、特定の診療科あるいは疾病領域についての専門薬剤師の養成と認定が急務である。その場合、認定を受けた専門薬剤師の知識・技術水準と実際の働きが、薬剤師専門職能に対する医療従事者あるいは患者からの評価に直接つながるところから質的な保証が重要となり、認定条件について多角的に慎重な評価・認証が必要となる。専門薬剤師認定制度の認証はこの意味からも認証機構にとって責任のある重要な業務となる。

このように、生涯研修の履修認定あるいは専門薬剤師の資格認定を事業として行う団体と制度が認証機構の認証対象となるが、アメリカの例で見ると、生涯研修プロバイダーには薬系大学が最も多く、次いで職域団体、およびそれらの支部、さらに学会、NPO組織等となっている。わが国でも、生涯研修が義務化される場合には、組織・人材が備わっている薬科大学がプロバイダーの第一候補となると考えられる。専門薬剤師の認定は、アメリカの場合では薬剤師の職能団体が単独あるいは他の団体と合同で認定団体を作って行っているので、わが国でもそのような形がとられるであろう。

5.評価・認証手順

認定事業を行う団体が、自らの認定事業の目的、内容、方法等について評価・認証を受けることを希望する場合には、評価基準に則り必要資料を作成して認証を申請することが出来る。それを受けて、認証機構内の薬剤師認定制度委員会が、評価基準に基づいて評価を行い、基準に適合する場合には実施母体及び当該認定制度を承認することとなる。

評価基準には、各認定事業の目的と役割、事業母体の組織と規約等に関する項目のほか、認定制度を企画・運営する委員会、認定対象範囲と領域,認定取得の基準や条件あるいは有効期限(更新条件)等に関する幾つかの項目が含まれる。さらに認定事業を円滑に運営するための財源、事務処理の要員等についても評価を行う。

基準への適合の評価に際しては、各認定制度の特色を勘案し総合的に判定することが必要である。評価に際してはヒヤリングを行うこともある。基準に照らして不足の部分がある場合には、当該母体あるいは制度に対して修正・補充を求め、適合に達した時点で承認する。

認定制度としての基準には適合するが、実施母体としての基準、たとえば運営予算、事務処理職員等が不足している場合等の助成をどのように取り扱うかについては、認証機構としてさらに検討の要がある。認定証の発給は原則として実施母体が行うが、認定証には、認証機構が承認した制度であることを明記することとしたい。

認証を受けた認定制度と実施母体の名称は、広く公表する。認定制度の承認は、6年ごとの更新を予定しているが、更新に際しては原則として実施母体より提出された自己評価報告書に基づき評価を行う予定である。

おわりに

薬剤師認定制度認証機構は、画期的な法改正をその目的とする薬剤師の質の向上と国民医療の改善につなげる方策の受け皿として発足した。薬剤師一人一人が法改正の意味を改めて認識して自らの能力・適性を高め世の中にアピールするためのCredentialsを得られるように、しっかりした内容と実施母体を持つ認定制度が数多く生まれて欲しいと考えている。それにより、全国津々浦々に生涯研修の実績が積み重ねられ、薬剤師の活動を通じてわが国の医療の改善が実感されるような時代が到来することを願っている。

1 役員と所属団体(所属は5月17日現在)

 

理事(◎理事長)

 井上 圭三 日本薬学会 

 工藤 一郎 日本薬学会

 乾  賢一 日本医療薬学会

 内野 克喜 日本医療薬学会

 中西 敏夫 日本薬剤師会

 生出泉太郎 日本薬剤師会

 全田  浩 日本病院薬剤師会

 奥村 勝彦 日本病院薬剤師会

 佐藤登志郎 日本私立薬科大学協会

 望月 正隆 日本私立薬科大学協会

 坂本 尚夫 国公立薬学部長会議

◎内山  充 薬剤師認定制度認証機構

監事

 七海  朗 日本薬剤師会

 平井 俊樹 日本薬剤師研修センター

 

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